バイリンガルに育つということは、単に二つの言語を「話せる」ようになることではありません。言語の運用能力には、語彙や文法の知識だけでなく、情報を整理し、理解し、考えを構築する
思考力が深く関わっています。とりわけ、母語である日本語での深い読解力や表現力は、バイリンガルの基礎として非常に重要です。
多くの保護者が抱くのは、「現地語も日本語も使っているから、自然とバイリンガルになるだろう」という期待です。しかし実際には、母語である日本語の語彙や文法が十分に育っていない状態で現地語の教育を受けることで、どちらの言語も“浅く広く”なってしまうケースが少なくありません。これを防ぐには、
一つの言語で深く考える経験が欠かせません。
言語学においては、語彙の獲得や論理的表現の習得には「読む」経験が大きく関わることが知られています。特に、物語文や説明文を通して登場人物の心情を読み取ったり、因果関係を整理したりする読解は、思考の筋道をつける訓練そのものです。こうした日本語での読書経験は、英語や現地語といった他の言語における理解力にも好影響を与えると、多くの研究が示しています。
バイリンガル教育の現場では、子どもがどのような語彙をどれだけ蓄えているかが、その言語でどれだけ深く考えられるかを左右します。日常会話レベルの言葉(
BICS)だけでなく、学校の学習に必要な認知的・学術的言語能力(
CALP)を育てるには、意識的な語彙のインプットが不可欠です。そのためにも、日本語での読書は非常に有効です。
母語がしっかりしていれば、第二言語、第三言語への移行もスムーズになる。これは言語習得に関する基本原則の一つです。日本語の文章を読む中で、文の構造や論理展開に触れることは、他言語のリーディングにも通じる普遍的な思考力を育てます。言い換えれば、
日本語での深い読書体験が、真のバイリンガルを育てる足場となるのです。
海外に住む日本人家庭において、日本語での読書環境を整えるのは簡単ではありません。だからこそ、
Sakura国語のワークショップでは、教室での読書指導と家庭での継続読書を組み合わせることで、お子さまの“読む力”を継続的に支えています。
「読む→考える→伝える」このプロセスの根幹には、読解力があります。そして、それを育てるもっとも自然で効果的な手段が「読書」です。海外で育つからこそ、日本語という軸足をしっかりと持ち、多言語に展開していく子どもたちを支援すること。
Sakura国語のワークショップは、本質的なバイリンガル教育の場として、子どもたちの未来に貢献していきます。